赤いダイブ


まっ逆さまに落ちました。
始めは足が下になっていたけれど、いつの間にか頭が下になっていました。
あぁ、やっぱり頭って重いのね。
そんな事を考えながら頭に風を受けるのです。
所詮は校舎の屋上からのダイブだから死ぬかどうかなんて分からないけれど、
世界が逆転して迫っている時点で生きた心地などある筈もないのです。
いや、そもそもここ最近では生きていると実感した事などありません。
別にいじめられたとか、重病であるとか、そんなたいそうな理由なんてありません。
ただ ただ、自分はこの世界にいるべきではないと思ったから
こうして落ちているのです。

そう。わたしはこの世界にいるべきではないのです。

いつものように朝 目覚めると、
私の魂が胸にきちんとしまわれていない気がしました。
魂が少し上にあるような、気持ち悪い感じ。
自分が他人にしか思えないような、不思議な感じ。
何か足りない。
何処か満たされない。
私はその不満を屋上からのダイブで満たそうとしただけです。
何か違う事をして足りないものを補いたかったのです。
つまりこのダイブは私の生死で成功、失敗が決まるわけではなく、
ダイブすること自体ができれば成功です。

毎日毎日毎日毎日 同じ事の繰り返し。
太陽は東から昇って西に沈みます。
一日は24時間で過ぎていきます。
学校では飽きもせず毎回似たような授業をします。
現実という枠組みの中で緩慢に人の生死が繰り返されます。

つまらない つまらない つまらない!
なんてつまらない世界!
これでつまらない世界が少しでも面白くなればいい。
こんな世界滅びてしまえばいい!

ぼふんっ!

柔らかい地面に落ちたのかあまり痛みはありませんでした。
上空ばかり見ていたので気付きませんでしたが、
見ればふわふわの布団がそこらじゅうに敷かれています。
呆けていると、一人の男の子が走ってきました。
「あぁ、やっぱり君か」
知らない男の子です。同じ歳ぐらいでしょうか。
男の子というに相応しい、可愛い顔立ちです。
「君が今日当たり落ちてきそうだと思っていたんだ。
布団を敷いておいて良かった」
男の子はそう言って手を差し伸べました。
私は何が何だか理解できず、手を取るのに躊躇しました。
「本当に君が落ちてくるんだから、この世界も捨てたもんじゃないね」
「そうかしら」
「そうさ」
男の子の手を取ると思いの外強い力で引き上げられました。
「何で飛び降りたの?」
男の子は本当に、私が落ちてくることだけを予感していたみたいです。
きっと私の名前も知らない事でしょう。
「・・・何か、少しでも世界が変わればいいと思ったの」
「じゃあ成功だね!」
男の子は両手を広げ、夕焼けの下をくるくると回り始めました。
意味が分かりません。
「僕の世界が変わったよ。君が落ちてくるのを当てたんだ。
 その証拠にほら、こんなにも空が赤い!」

空が赤いのは夕焼けのせい。
とんでもない変人に捕まったみたいです。
それに、私が変えたかったのは彼の世界ではなく自分の世界。
どうやらダイブをしたら成功というわけでもなかったみたいです。
新たな世界の変え方を考えに帰ろうとすると男の子が叫びました。
「君の世界も変わったね!」
驚きに少し呆れも混ぜて振り返ります。
「僕に会えたよ」
そんな簡単に世界が変わるはずがない。
と、反論しようとして口を開くと
「あ、」と止まってしまいました。
どうやら私の世界もいつの間にか変わっていたらしいのです。
その証拠に空がこんなにも赤いのですから。

fin.

 お題は【高校生】高校生=屋上からのダイブって発想があほすぎるw